アドルフに告ぐでめぐる神戸の旅 本文へジャンプ
 

シックでおしゃれな元町の娘

「アドルフに告ぐ」の(ワイド版第4巻P122、文庫版第5巻P8)をご覧ください。ドイツから日本へ帰ってきたアドルフ・カウフマンが、自分の幼少期の神戸と比べて戦時下の神戸が大きく変わってしまっていることを嘆いています。
そのときのせりふのひとつ、もんぺの和服姿の女性を見てこう言います。
『あのシックでおしゃれな元町の娘たちの姿はどこへいってしまたんだ』
(手塚治虫『アドルフに告ぐ』文芸春秋社,1985,第四巻,P122)
シックでおしゃれな元町の娘が戦前にいたのでしょうか?神戸の歴史的なファッションの事情を、参考資料より探してみました。

『町自体の発祥が外国航路の港、それもヨーロッパ航路として開けたから、洋服というものが、暮らしの中にしっかり根付き同化している。
ヨーロッパ航路の終着港であったということは、神戸人の趣味趣向を語る上で極めて重要だ。横浜がアメリカ航路の港として開け、文化の面でもアメリカナイズされた面が強かったのに比べ、神戸にはシックなヨーロッパ調が根付いたのである。
だから、神戸人の服装に関するセンスも自然体で気負いがない。ノーマルで健全、派手すぎず地味すぎず、中庸を得ている。そして、洋服なる外来品の着こなしに、ツボを心得た人が多い。
色彩的なイメージでいえば、神戸人の趣味は中間色である。』
(丹波元『こんなに違う京都人と大阪人と神戸人』PHP文庫, 2003.P44)

『開港直後の神戸には、約二百人の欧米人がいた。外国人が増えるにつれ、彼らが着る服の需要も増加し、一足早く欧米文化の波が寄せた上海から来た、中国人の婦人服仕立て職人が開港地に店を構えた。米国の派手めを受け入れた横浜と、シックな欧州風を導入した神戸などに洋装の土壌が培われていく。
近代化とともに大阪や神戸の金持ちが、阪神間に住むようになり、ご婦人方は洋服をまとい、ファッションリーダーとして町をかっ歩し始める。”軽薄”という世間のそしりもものかは、ハイカラで新しもん好きの神戸っ子は、日本髪に代わる束髪の普及とともに洋装を加速していった。』
(神戸新聞写真部・編『目で見るひょうご100年』神戸新聞総合出版センター, 1999.P150)

確かに航空機での移動がほとんどなかった戦前の時代では、外国とのつながりとしての「港町・神戸」は今以上に西欧文化とのつながりが大きかったと思われます。
そこで今回、戦前の昔の絵葉書の中から「シックでおしゃれな元町の娘」を探してみました。テーマは『探そう!「シックでおしゃれ」な戦前の元町の娘コレクション』です。なお順位は当方の独断でつけましたので、あくまでゆるやかな順位と捉えてください。

『「シックでおしゃれ」な戦前の元町の娘コレクション』

今回のグランプリのルールは二つです。一つは神戸の元町エリアに在籍している女性に限ること。二つ目は戦前の大正時代から昭和初期までのエントリーに限ることです。では第8位からいきたいと思います。

第8位「セーラー服の女学生」
神戸元町通の繁栄
『神戸元町通の繁栄』
まずはこの絵葉書からエントリーです。後方に大丸百貨店の姿がはっきりと見えますので、ここは現在の元町商店街の1番街の入口付近です。
女学生三人組
絵葉書右下の女学生三人組です。服装は一般的なセーラー服ですが、かぶっている帽子がなんとも洒落ています。隣の男の子も何やら三人組に興味ありげに見上げていますね。

第7位「元町マダム」
華やかなる商店街を並ぶる元町通り
(神戸)『華やかなる商店街を並ぶる元町通り』
第7位も元町商店街からのエントリーです。右に現在も存在する澤谷文具店が見受け、奥に大丸百貨店が見えるのでここも元町1番街です。
元町マダム
左の「元町マダム」軽快な服装に洒落た帽子をかぶっています。いささか足がむくんでいるようにも見えますが、これは女性の方に見てもらったら「もしかして妊婦さんだからかもしれない」との事でした。そう言われてみたら、全体的にふくよかな印象です。
元町マダム
かなり顔立ちは美人そうな気配を漂わせております。

第6位「優雅なる東遊園地」
神戸東遊園地
『神戸東遊園地』
神戸東遊園地
『神戸東遊園地』
二枚の絵葉書からエントリーです。登場人物を確認すると二枚とも同じ人たちが写っていることが確認できます。恐らく何枚か撮影して一枚は彩色してカラーに、もう一枚は白黒で発行したのだと思われます。これはクリケットをしているのでしょうか?
ベンチに座る女性二人
何とも優雅な…。帽子がすごいです。これだけを見たら、これが日本の写真とは気がつかないでしょう。
ベンチに座る女性二人
しかし、今回のテーマである「シックでおしゃれ」というには少し優雅すぎます。よってこの順位です。
遊ぶ女性
遊んでいる女の人たちもロングスカートにブラウス、そして帽子といった姿です。
遊ぶ二人
彩色した絵葉書ではスカートの色が様々でしたが、モノクロで見るともしかしたらお揃いのスカートをはいている可能性もあります。

第5位「東遊園地の涼風」
神戸東遊園地
(神戸名所)『神戸東遊園地』
第5位も東遊園地からのエントリーです。先ほどの場所は運動場の広場で、こちらは遊歩道のエリアです。
女性一人
人物が移動していたせいか写真としてはややぶれてしまっていますが、かなりの「シックでおしゃれ」具合です。白い半そでのワンピースに白い帽子。帽子は今ではなかなか見ることのない大きさです。しかし、全体的なバランスはかなりスマートに見受けます。心持ち涼しげな印象です。

第4位「幸福の下の二人」
神戸元町通
『神戸元町通』
第4位は再び元町商店街からのエントリーです。左上部に「山葉オルガン」という文字ののぼりが見えますが、これは現在の「YAMAHA」です。元町商店街の1番街に今も同じ場所で「ヤマハ」があります。山葉=ヤマハ、そのままですね。
夫婦二人
後姿からでも幸せそうな様子が伝わります。サマースタイルの男性は左手に風呂敷包みを持っています。何か家へのお土産でしょうか?そして隣の女性は襟付きの半袖ワンピースを華麗に身にまとい、日傘は二人を包みこむようにさしています。幸福度でポイントアップです。

第3位「元町マダム三人組」
観光・神戸
『観光・神戸』
第3位も元町商店街からのエントリーです。絵葉書の左の写真は湊川神社、右の写真が元町商店街です。澤谷文房具店が見えますので現在の1番街です。
元町マダム三人組
元町マダム三人組が歩いております。冬場なのでしょう帽子をかぶりコートを着ているのが確認できます。それも左の女性は恐らく毛皮のコートではないでしょうか?三人とも各々のセンスのよさをうかがえますが、特に真ん中の女性が「シックでおしゃれ」な感じがします。「アドルフに告ぐ」の(ワイド版第2巻P159、文庫版第2巻P161)の左下のコマの由季江のファッションとそっくりです。

第2位「ホワイトコートの美麗」
神戸元町通の繁栄
『神戸元町通の繁栄』
第2位は第8位エントリーと同じ絵葉書からの登場です。しかし、戦前の元町商店街も非常に活気に満ち溢れておりますね。
白いコートの女性
左女性にご注目ください。右手袖口にボタンが二つついたホワイトコートを着ております。そして足元は大変見にくいですが、何やらブーツを履いているのではないかと思われます。もしそうだとしたら、大変な「シックでおしゃれ」具合です。問題は帽子ですが、黒い映り込みがあります。これが装飾か何かなのか、写真の汚れなのか判断が難しいです。そこでデジタル加工で修正を施してみました。
白いコートの女性
判断は分かれますが、写真の汚れのような気がします。大変ホワイトを基調とした「シックでおしゃれ」な装いです。隣にいるのは母親でしょうか?そうだとしたら、母娘の関係を大事にすると言われる神戸の文化は戦前から続いているといえます。映り込みが小さいのが残念です。

第1位「白装の女学生と元町マダム」
神戸元町通
『神戸元町通』
第1位も、元町商店街1番街からのエントリーです。右上に澤谷文房具店の看板がはっきりと見て取れます。また、大丸百貨店も中央奥に見えます。
女学生と元町マダム
中央に三人の女学生が写っておりますが、今回は右側二人のエリアに注目します。白い服に白い帽子、三人とも同じスタイルですので恐らく女学校の制服でしょうか?それにしても大変な「シックでおしゃれ」度です。整えられた後ろ髪が白い制服に映えて大変美しいです。
そして二人の女学生の前を歩く女性二人を見てください。左側の女性は恐らくキャメルと思われるコートに帽子、右側の女性に到ってはもう言いようがないヨーロピアンな装いです。髪型、スタイル、着こなし、完璧です。前を歩く子供たちが振り向いているのがわかります。女学生と元町マダムの合わせ技で堂々の第1位です。

結論「シックでおしゃれな元町の娘は戦前にもたくさんいた!」
確かに戦前の神戸には「シックでおしゃれな元町の娘」がたくさんいました。特徴についてまとめてみると、戦前の神戸ファッションは「ホワイトなど薄い色を基調としたシックな装い」、「軽快でさわやか」そして「帽子をかぶる」という点がポイントだと思われます。特に帽子率は高いですね。
元町商店街については「元町商店街」に、また神戸大丸については「神戸大丸と元町」のページにも詳しく載せております。

しかし、最後に。
これから彼女たちには苦難の戦争の時代がやってきます。アドルフ・カウフマンが嘆いたように、彼女たちのこんなにも幸せそうでファッショナブルな姿は失われてしまったのでしょう。
そして「アドルフに告ぐ」でも描かれていますが、神戸にも大空襲がやってきます。もしかしたら彼女たちの中にも空襲で亡くなられた方もおられるかもしれません。戦争は本当に残酷なことです。
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